クラックに対応した防蝕ライニング2
構造クラックの上に施工する防蝕ライニング
構造クラックの上に、普通のライニングをすると、その同じ箇所にヒビが入ります。
ライニングのひび割れを防ぐには、特別なやり方が必要です。
ライニングのひび割れを防ぐには、特別なやり方が必要です。
コンクリートの ひび割れには、別々の原因による色々なタイプが有ります。
それは偶発クラックと構造クラックに分けられます。
偶発的クラックというのは、硬化収縮、地震、コールドジョイント等のような、過去にただ1回だけ存在した原因によって発生したものであり、クラック幅が変動しないという特徴があります。
構造クラックというのは、その構造物の構造上、必然的に発生するものであり、現に今存在する原因によって発生しているものです。
クラック幅が時間的に変化するという特徴があります。
クラック幅が時間的に変化するという特徴があります。
半地下式の大型コンクリート槽の地上部に発生するクラック(*1)とか、伸縮目地(*2)のようなものがこれにあたります。
(1)槽は夏冬の温度差で伸縮するが、地面に拘束されている地中部と、フリーで動ける地上部では伸び 方が異なるため、クラックが発生する。
(2)大型構造物の伸縮を吸収する目的で、構造体の一部に故意に作られた間隙のこと。
(1)槽は夏冬の温度差で伸縮するが、地面に拘束されている地中部と、フリーで動ける地上部では伸び 方が異なるため、クラックが発生する。
(2)大型構造物の伸縮を吸収する目的で、構造体の一部に故意に作られた間隙のこと。
幅が変動しない偶発クラックは、樹脂注入やパテ埋めで修理できますが、幅が変動する構造クラックにその方法を適用すると、(クラック幅が変動するので、)同じ場所に、再度クラックが入ります。
従って、構造クラックを有するコンクリート構造物に何かの被覆をする場合には、その“伴割れ”を防ぐ工夫が不可欠です。
そういう工夫をしたものが、構造クラック用ライニング仕様です。
構造クラック用ライニング仕様
構造クラックの例
どんなタンクでも、液を入れると液圧によって膨らみます。
金属製タンクなら、圧力に比例して多少伸びて膨らんでバランスがとれますが、コンクリートは少しでも膨らむと、すぐヒビが入ります。(注*)
どんなタンクでも、液を入れると液圧によって膨らみます。
金属製タンクなら、圧力に比例して多少伸びて膨らんでバランスがとれますが、コンクリートは少しでも膨らむと、すぐヒビが入ります。(注*)
このヒビは液を抜くと元に戻り、液を入れると再び広がり、液が漏れ出します。
典型的な構造クラックです。
このような動くヒビ割れをどうやってシールするか?
典型的な構造クラックです。
このような動くヒビ割れをどうやってシールするか?
先ず、普通に塗装やライニングをしたらどうなるのか?
そこから考えてみましょう。
下図です。元のクラック幅はゼロですから、AからBに変化した時、クラック部の塗膜の伸び率は、無限大です。(△δ/0=∞)
(こんな拡がり方を“ゼロスパンの拡張”といいます。)
無限大の破断伸び率をもつ材料はありませんから、どんな塗膜でも破れます。
では、ゴム状塗膜だったら?・・・図B´のようになって破れないのでは?
A
B´
C
↑部に注目してください。ここの伸び率は計算上無限大です。だから、B´のようになることはありません。必ず、C図のように下部に切欠き(ノッチ)が入ります。
だから、膜厚が薄かったり、ノッチが伝播しやすい材料であったなら、やはり、切れてしまいます。
つまり、ゴム状というだけでは、クラック対策になりません。
だから、膜厚が薄かったり、ノッチが伝播しやすい材料であったなら、やはり、切れてしまいます。
つまり、ゴム状というだけでは、クラック対策になりません。
以上を予備知識として本題に入ります。実例で考え方を説明しましょう。
弊社が行っている構造クラック対策は、
① 非接着にして、ノッチが入るのを防ぐ。
② 膜の一部にノッチが入っても、それが膜本体にダメージを与えない構造にする。
の、二種類です。(あと一種、特殊なやり方がありますが、あとで説明します。)
① 非接着にして、ノッチが入るのを防ぐ。
② 膜の一部にノッチが入っても、それが膜本体にダメージを与えない構造にする。
の、二種類です。(あと一種、特殊なやり方がありますが、あとで説明します。)
先ず①から、断面図で説明します。
図1のようにクラック上にDの幅で、例えば養生テープを貼ってから、塗膜を覆せたと仮定しましょう。(このような働きをするテープをボンドブレーカーといいます。)
クラックが、ゼロから△dに拡がった時、この伸びはDの幅に分散吸収されます。
クラックが、ゼロから△dに拡がった時、この伸びはDの幅に分散吸収されます。
先程、無限大だったその伸び率は△d/Dになります。この数値が、膜材料の破断伸び率より小さければ膜は破れない・・・という仕掛けです。
次の(図2)は、それをさらに徹底し、一定間隔で作ったアンカーで下地と結合させたものです。
(図2)
(旭硝子エンジニアリング製TSAシート)
図1のやり方が、クラックを個別狙い撃ちする方式なのに対して、図2の方式は、施工後、コンクリートのどこにクラックができても、膜は損傷しません。
(図2のようなライニング方式を“ルースライニング”或いはアンカーライニングと称します。 写真のような成型品を使うやり方の他、FRPライニング方式でも出来ます。)
(図2のようなライニング方式を“ルースライニング”或いはアンカーライニングと称します。 写真のような成型品を使うやり方の他、FRPライニング方式でも出来ます。)
②の全面接着方式です。ソテック流の原理は次の三つ。
①、ノッチの入りにくいゴム状のものを厚く塗る。
これが最も原始的なやり方です。
(悪くは無いけど、芸も無い)
(悪くは無いけど、芸も無い)
←*
②、膜の中間にノッチブレーカー*を設ける。
(* ソテック用語なのでよそでは通じません。)
ガラスクロス等の高強度材料を軟質材料の上にはさむと、ノッチの伝播がここで止まります。
②、膜の中間にノッチブレーカー*を設ける。
(* ソテック用語なのでよそでは通じません。)
ガラスクロス等の高強度材料を軟質材料の上にはさむと、ノッチの伝播がここで止まります。
←高強度(ノッチブレーカーとして働く)
←軟質
③軟質な下層、高強度な上層という二重構造にすれば、下層のノッチは界面で止まります。
③´このバリエーションとして、軟質層を発泡スチロールや発泡ポリエチレンにして、より効果を高めるやり方もあります。
(例・・弊社“ポリバックライニング。)
(例・・弊社“ポリバックライニング。)
横ズレ(せん断)の動きをする間隙のシール法
さて、構造クラックには、もう一つのタイプがあります。
図のように、二つの面が横ズレするような空隙です。
A、非接着方式の考え方を応用して、シールすることもできます。
←ゴム状シール材
ボンドブレーカー
これは、石油タンクの底板張出部のシールなどに用いられているやり方です。
B、こんな空隙はグリス状のものやオイル状のものを注入してシールする方が、素直なやり方です。(機械類は、このやり方が基本)
狭い隙間への注入作業を想定した、低粘度で注入し易く、時間が経つと高粘度の粘着性物質に変わるものも有ります
(弊社ペネトシール・・・耐水、防錆、粘着シーラント)
(弊社ペネトシール・・・耐水、防錆、粘着シーラント)
注入時は低粘度
粘着性が出てくる。