防蝕ライニングの接着技法
防蝕ライニングの接着トラブル
接着トラブルは、何故起るのか?どう防ぐのか?
通常、接着力と言われているものの実体は、“耐破壊力”であることを『壊れにくい接着物の作り方』で説明しました。
防蝕ライニングの接着のトラブルを防ぐには、“大きな接着強度を実現させる”という考え方より、“接着の弱点を作らない”という考え方の方が、決定的に重要です。
トラブルは全て、“問題点”から発生するからです。
具体的にどういうことなのか・・“問題点”を作ってしまった例を紹介します。
(私達が、修理や原因調査を依頼されたトラブルの実例です)
(私達が、修理や原因調査を依頼されたトラブルの実例です)
【例:1】 | 打設三日後のコンクリート基礎に、ビニルエステルFRP2PLYのライニングを行い、一週間後に剥がれてしまった。 |
【メカニズム】 | どんなライニング材でも下地表面に対し、膜厚と弾性率と膜の伸び縮みに比例したストレスをかけていると推定されますが、ビニルエステルは硬く、硬化収縮が大きいため、接着面へのストレスはそれなりに大きくなります。 一方、コンクリートは元々引張強度は10kg/cm2前後しかない上、材齢三日程度では、さらに低い強度の状態に止まっていますので、ビニルエステルFRPの収縮の張力を支えきれずに破断してしまいます。 これが、剥がれの主因です。 もう一つ、材齢の若いコンクリートは含水率が高いため、プライマ-がコンクリート内部にあまり深く浸透しません。 そのため、アンカー効果が小さくて、接着力そのものが小さくなるのも、原因の一つです。 |
【例:2】 | コンクリート表面を削らずに、そのままライニングを行い、半年後に剥がれた。 |
【メカニズム】 | (だれでもできる重防蝕プロローグ)を見てください。 |
【例:3】 | 鋼製タンクにエポキシ塗装をし、60度の水を入れたら、一ヶ月で前面にブリスターが発生した。 |
【メカニズム】 | (用語)の“水蒸気拡散”を見てください。 |
【例:4】 | ガラス水槽にアクリルコーティングをしたら、一年後、剥がれた。 |
【メカニズム】 | (水と接着)を見てください。 |
【例:5】 | 工場で作ったスチールタンクに防錆プライマ-を塗布して輸出し、現地でフレークライニングを施したら、剥がれてしまった。 |
【メカニズム】 | (SOTEC LLプライマ-)を見てください。 |
【例:6】 | 雨の日、施工したFRPライニングが、液を入れて一ヶ月目に剥がれてしまった。 |
【メカニズム】 | (層間剥離)を見てください。 |
【例:7】 | 長年使っていたエポキシの厚塗り床を、スチーム洗浄したら剥がれてしまった。 |
【メカニズム】 | 床材と床の接着界面には、両者が同温度の場合、両者の熱膨張率の差に比例したストレスがかかりますが、急熱によって、片方だけ昇温した場合は、(伸びの差は、はるかに大きくなるため)さらに大きなストレスがかかります。 そして、接着面がそのストレスを支えきれないと剥がれます。 |
このように、剥がれのメカニズムは、
①すぐ起きるもの
②ある条件下で、経時変化で起こるもの
③偶発的環境条件によって起こるもの
など、様々ですが、上記の例で分かるように、剥がれの原因は大抵 不注意や無知による事故です。
①すぐ起きるもの
②ある条件下で、経時変化で起こるもの
③偶発的環境条件によって起こるもの
など、様々ですが、上記の例で分かるように、剥がれの原因は大抵 不注意や無知による事故です。
(だから注意と知識で減らせます。)
ということで、結論は、(長持ちする防蝕ライニングを作るノウハウ)と同じです。
良く考えて状況に合ったやりかたをせよ ということです。
簡単ではありませんが、技術の概略は、このホームページに入れてあります。
参考にして下さい。
具体的にどうすればよいか
『“接着”及びその“経時変化”に関するすべての要素を、全部読みきって完璧な接着設計をする。』などというのは、神様にしかできぬことですから、人間の場合は、結局、
知っている限り、耐破壊性を損ねそうな要素は可及的に除去し、高めそうなことは全部やる。・・・というのが唯一現実的選択です。
知っている限り、耐破壊性を損ねそうな要素は可及的に除去し、高めそうなことは全部やる。・・・というのが唯一現実的選択です。
【どんな事に留意するのか】
①下地の材質や状態に合わせた接着法を行う。
通常の接着剤が使えない下地(塗装や接着に注意を要する素材:参照)や、状況の場合は、それに適合させた接着プライマ-やライニング材が必要です。
例えば、
・長く使った植物油タンクの鋼板には、油がしみ込んでいますので、油面接着型の材料でないとうまく接着しません。油がしみ込んだコンクリートにも同じようなことがいえます。
・水中で施工しなくてはならない場合は、水中硬化型のライニング材を使います。
・打設直後のコンクリート面には、施工せず、硬化を待つのが原則です、が、やむをえず施工する場合は、強度が弱く、含水率が大きいことを十分に考慮し、湿潤面接着型でかつ、硬化収縮が小さく、できれば軟質の接着プライマ-を使います。
コンクリート面を目荒しして、凹凸をつけ、アンカー効果を利用することも大切です。
(適当なタイミングで、竹ぼうき等で表面にキズをつけるやり方が簡単です。)
・長く使った植物油タンクの鋼板には、油がしみ込んでいますので、油面接着型の材料でないとうまく接着しません。油がしみ込んだコンクリートにも同じようなことがいえます。
・水中で施工しなくてはならない場合は、水中硬化型のライニング材を使います。
・打設直後のコンクリート面には、施工せず、硬化を待つのが原則です、が、やむをえず施工する場合は、強度が弱く、含水率が大きいことを十分に考慮し、湿潤面接着型でかつ、硬化収縮が小さく、できれば軟質の接着プライマ-を使います。
コンクリート面を目荒しして、凹凸をつけ、アンカー効果を利用することも大切です。
(適当なタイミングで、竹ぼうき等で表面にキズをつけるやり方が簡単です。)
②下地表面の錆、レイタンス等、物理的に弱い層があれば、必ず取り除くこと。
③汚れ、水等、想定外の介在物を接着面から取り除くこと。
(ふき取り、サンドブラスト、サンダ-がけ等の手段で行います。これらの作業は下地処理、あるいはケレンと称されています。)
(ふき取り、サンドブラスト、サンダ-がけ等の手段で行います。これらの作業は下地処理、あるいはケレンと称されています。)
④接着プライマ-の配合比を守り、よく混合し、所定の時間内に塗布する。
(作業ミスを防ぐ)
(作業ミスを防ぐ)
⑤層間剥離を防ぐ施工をする。
(層間剥離:参照)
(層間剥離:参照)
⑥薬液や水や温度や温度変化、外力等が剥がれの原因になる可能性が有るときは耐蝕性をもたせたり、応力分散層を入れたりして、影響が小さくなる工夫で、防ぎます。
⑦施工しやすい構造にする。
(これは、設計段階で行うべきことですが・・)
ライニングしやすい構造になっていないと、いい作業がしにくくなり、それが原因で剥がれやその他のトラブルが起こることがあります。
そういう構造は、市販の樹脂ライニングの本に載っていますので、それを見てください。
ライニングしやすい構造になっていないと、いい作業がしにくくなり、それが原因で剥がれやその他のトラブルが起こることがあります。
そういう構造は、市販の樹脂ライニングの本に載っていますので、それを見てください。