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配合比計算

① 硬化剤の配合比を変えても構わない樹脂

不飽和ポリエステル樹脂ビニルエステル樹脂・MMA樹脂・フラン樹脂
これらの樹脂は、硬化剤の“触媒効果”或いはそれに類する反応によって重合して硬化します。
そのため、硬化剤の添加量や組み合わせを変えると硬化速度が変わります。
しかし、変るのは硬化速度だけであり、硬化物の物性は殆んど変りません
 
だから、これらの樹脂を使う場合、硬化剤は、硬化速度をコントロールするモノであると考えても実用上の問題はありません。
 
樹脂や硬化剤のカタログに、普通に使用する場合の標準的配合比が記載されている筈ですから、それを基に適宜、配合量を調整してつかいます。
(適宜とは、つまり・・・)早く固めたいなら「多く」、ゆっくり固めたいなら「少なく」加える、という事です。
   どんな樹脂に関しても言える事ですが、温度が上れば、硬化は(幾何級数的に)早くなります。 だから、それに応じて添加量を増減します。
(しかし、増減すると言ったって、0℃以下の低温での施工は、色々なトラブルの原因になりますので、硬化剤の増減で対処するより、「避ける」事をお勧めします。また、高温で、過度に硬化剤を減らすと、別のトラブルを生じます。 安易にやってはいけません。 )
 
では、そういった極端な使用条件に対処するには、どうするか。
硬化剤の種類を変更します。
不飽和ポリエステルやビニルエステルの場合は、硬化剤メーカー(化薬アクゾや日本油脂)のカタログに、色々物性が異なる製品が載っていますので、その中から選定します。
フランの非標準的硬化コントロールに関しては、知りません。必要なら、メーカーに問い合わせてみて下さい。(武田薬品)

② 硬化剤の配合比を変えてはいけない樹脂

 
   エポキシ樹脂は“付加重合”という形式の反応で硬化させます。(例外有り**)これは、樹脂(の感応基)をA 硬化剤(の感応基)をBで表すと、ABABABABABAB・・・・と交互に繋がってゆく反応です。
どんな樹脂であれ、この反応様式で硬化する樹脂をキチンと固めるに樹脂硬化剤の感応基数を同じにする必要があります。
        数が違え余った片方の感応基はそのまま残ります。 ・・その結果・・
   体積当りの結合数が少なくなるので、軟らかくなり、環境遮断性が低下します。

                  反応性の感応基が多数残るので、耐蝕性が悪くなります。
 
だから、エポキシ樹脂は配合比をキチンと守り、良く混合攪拌しないといけないのです。
 
その点、①の触媒硬化型樹脂と混同しないように、ご注意下さい。
 
どういう方法で感応基数を揃えるのか?
 
エポキシ樹脂のカタログにはエポキシ当量という数値が記載されています。
一方、硬化剤のカタログにはアミン当量或いは活性水素当量(注1)が記載されている事があります。
ここでいわれている当量とは、分子量(注2)を感応基数で割った数値です。つまり感応基一個当たりの分子量です。 だから・・
同一当量を混ぜれば、感応基の比は自動的に1:1になります。
 
実際にやってみましょう。
シェルのエピコート828の分子量は約380で一つの分子にエポキシ基が2個付いてます(感応基数は2と表現します)から、エポキシ当量は380÷2=190
 
(エポキシ当量は自分で計算しなくてもカタログに必ず表示されています。)
 
エピコート1001の分子量は約900で平均感応基数は1.9ですからエポキシ当量は900÷1.9=474 です。
 
一方、ある硬化剤の活性水素当量が80だったと仮定します。
 
これを使って上記二つを硬化させるにはエピコート#828の場合 ・・・190(#828の当量):80(硬化剤の当量)の重量比で混合します。
エピコート#1001の場合・・・474(#1001の当量):80(硬化剤の当量)の重量比で混合します。

        別のやりかた・・一般的な硬化剤配合量の表示方法
 
エポキシ樹脂の硬化剤のデータとしては、上記のような活性水素当量で表示しないで標準配合量という表示の仕方をするのが今や一般的です。
これは“標準タイプエポキシ”と通称される上記#828タイプ・・つまり」“ビスフェノールAタイプでエポキシ当量190”のもの100gに対する配合量を表示したものです。
“エポキシ樹脂100gに対する配合量ですよ”という意味のper handred resinの頭文字を並べてphr と表示します。(読み方はそのままピーエッチアール
【憶えましょう・・①】
    硬化剤のカタログに“標準配合量30phr”と表示してあったら、それは「標準エポキシを固めるのなら、100g当り30g加えよ!」という意味です。
 
但し、これを使って標準でないエポキシ樹脂を固める場合配合比を変える必要があります
【憶えましょう・・②】 標準でないエポキシ樹脂への配合量標準配合量×標準エポキシのエポキシ当量÷標準でないエポキシのエポキシ当量・・です。
 
例・・#828(当量190である標準エポキシ)を100g固めるのに、ある硬化剤が80phr必要だったら、#1001を100gの場合は 80phr×190÷474=32phr.・・となります。
 

**例外・・・【触媒系硬化剤を使う場合は話が別です】
   上記はあくまで通常のアミン系硬化剤等による付加重合で硬化させる場合の話です。

        エポキシ樹脂は触媒で固める事も出来ます。 例えば・・・
イミダゾールや3級アミン等の触媒系硬化剤で重合させる場合は上記の話は全部チャラです。その場合は、不飽和ポリエステル等と同じ考え方になります。
 
(注1)【アミン当量と活性水素当量の差異】
アミノ基(の水素)とエポキシ基が反応するのですから、算数的に考えれば両者の数を同じにすれば良い、という事になります。・・が、現実問題として、硬化剤に含まれる多数のアミノ基の個々の反応性はビミョーに異なり、中には、殆んど反応しないナマケモノも含まれます。・・で、そういうものまで含めて形式的にアミン当量を計算しても現実に合わなくなります。そこでそういう不良は員数外として無視し、チャンと働く者だけをカウントして、その数に分子量を割り振ったのが活性水素当量です。つまり、活性水素当量とは、実質的アミン当量の事です。
(注2)【分子量とは?】
原子や分子は一個二個三個・・などと取り扱うにはあまりに小さ過ぎるので6、02×10の23乗個という膨大な数(アボガドロ数の集団一まとめにして、取り扱うという習慣が定着しています。(アボガドロ数個集まった集団を化学屋は 1“モル”と表現します。)
ともかく、それだけ集めても、水素分子で約2、酸素分子で約32にしかなりません。 この2や32といった数値を分子量称する取り決めになっています。
 
つまり分子量とはアボガドロ数集めた分子の質量からgを除けたものです。
 
【当量】 とは、それを、構成員であるエポキシ基やアミノ基等の感応基に均等に振り分けた“分け前”のことです。
つまり、分子量600のエポキシ樹脂の分子1個にエポキシ基が3個ついていたら、エポキシ当量は、200です。 (600÷3=200)同様に、分子量540の硬化剤にアミノ基が4個付いていたら、アミン当量は135です。
(540÷4=135)だから、このエポキシ樹脂と硬化剤を200:135の重量比で混ぜると、両方の感応基の数は同じになります。
(そういう、当量で 1:1 の混ぜ方を当量配合と言い、硬化剤配合の標準です。)
 

ポリウレタン樹脂

ポリウレタンはポリイソシアネートとポリオールを付加重合させて固めます。
ちなみに、ポリというのは“沢山の”あるいは“複数の”という意味の接頭語であり、イソシアネートというのは-NCOという感応基を表し、オールというのはーOHという感応基を表します。つまり、それぞれ、「イソシアネート基を沢山もった分子」「水酸基を沢山もった分子」という意味です。
 
**「市販の最もスタンダードなポリオール製品はエステル結合を持った物が多く、これはポリエステルポリオールと言う名前で分類されています。もう一つのスタンダードタイプはエーテル結合を併せ持っている物であり、これはポリエーテルポリオールと称されます・・・が・・・この業界の多くの人たちはそれを“ポリエステル”“ポリエーテル”(或いは単にエステル、エーテル)と省略形で言う習慣を持っています。(カタログにも製品ラベルにもそう記載されている事があります。)そういう省略形を文字通りに解釈しないよう、ご注意下さい。」**
 
イソシアネート基と水酸基は反応して結合します。
 
だから、ポリオールをAポリイソシアネートをBで表すと、硬化物はABABABAB・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・と・・・一応はそういう事です。
エポキシ樹脂と同じジャン・・と気付いたあなたは天才です・・・お世辞です・・
 
で・・どちらが硬化剤なの?・・・難しいご質問です。分りません。
好みで決めればいいと思います。(同じ事は、エポキシ樹脂についても言えますが、エポキシ樹脂の場合はどちら側を硬化剤と言うか、習慣として決まっていますので、混乱は有りません。)
で・・しょうがないので、ウレタンの場合は「イソシアネート成分」「ポリオール成分」という言い方をします。(塗料業界では大抵、ポリオールを硬化剤と表示しているようです。その結果、主剤1Kgに硬化剤2Kgを加える・・といった、素人を???・・と混乱させる事態を招くため、主剤-硬化剤という言い方を止め、A材-B材・・という表示にしているところもあります。)
 
で・・両者の配合比はどうやって決めるのか? 手がかりは・・・
イソシアネートの場合、大抵・・NCO含有量○○%という表示になっています。
ポリオールの場合・・OH価(mg/KOHg)あるいはOH含有量%あるいは稀にOH当量等・・
・・殆んど好き勝手な表示になっています。 部外者には暗号です
・・・・????・・・・
   OH当量の意味は分りますよね? (分らない人は廊下に立ってなさい・・うそです。)
NCOの方も当量表示だったらエポキシと同じ要領で配合出来るのに・・・と思った人は鋭い・・・その通りです。 では全部当量表示に直しましょう。
 
        NCOの分子量(=42)÷NCO含有量(%)×100=NCO当量
        OHの分子量(=17)÷OH含有量(%)×100=OH当量
        KOHの分子量(=56100)÷OH価OH当量
 
KOHの分子量は56.1のハズだけど?・・実はOH価は1gのポリオールをKOHで滴定した時の消費量をmg表示したものです・・と聞いて分る人はこの項を読む必要が無いでしょうけど・・
スミマセン・・簡明に説明する能力が無いので、上式を丸暗記して下さい。・・以上終り。

   双方の当量が分ったら、その比率で混ぜて下さい。・・それが基本です。
 
   【・・ということは?・・キホンじゃないやり方があるということでは?・・】 その通りです。
    当量配合という考え方は、双方の感応基が1:1で反応する、という前提に立っています。
    さて・・ウレタンの付加反応は本当にABABAB・・・になっているのか??
実は・・・そんなに単純じゃ無いんです。
例えが上品で恐縮ですが、100人の男或いは女の独身者に対し、これに見合う数の異性を用意しろ、と言われた場合、あなたは何人用意するでしょうか?
(好き嫌いは無し、ということで・・)
100人でピッタリ間に合う!・・というのが当量配合の答です。 しかし・・用意したのがオカマ同友会や愛人蓄積を世に広める会だったら・・計算は合わなくなります
実は、ウレタン反応には多少そういう趣があります。
つまり、水酸基とイソシアネート基の反応には色々な異なる形式があり、必ずしも1:1で反応するとは限りません。また、NCOは周辺の水分とも反応出来ます。
・・ということで・・イソシアネートというのは、そういう“思惑通りにならない”部分があるため、当量より多少多目に配合するのが普通です。
どのくらい多目にか?・・それはケースバイケースと言うしかありません。
    最適配合は当量で1・5倍とか2倍なんて事もあります。
 
また、反応させる条件の差異(例えば温度の高低)によって、反応形式が変る事がありますので、「同じ成分のハズなのに、出来た物が何か違う」なんて事も起きます。
それ故、最適配合量は、実験で確かめる必要があります。
ウレタン大明神のお告げ・・頭で計算するな、手でやれ!

(実はエポキシ樹脂にも若干そういう問題がありますが、読んでる方の頭を混乱させるだけと思いますので、説明は止めます。・・エポキシの場合はそれは枝葉末節であり、無視しても問題無い・・というより、硬化剤メーカーで、その補正計算を済ませた結果を活性水素当量標準配合量という形で表示しているのですから、通常の場合、使う側があれこれ考える必要は無い、という事です。)
 
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