水中ライニング・水中接着施工
海洋構造物の、水中や 干満帯(ダイダルゾーン)や 飛沫帯(スプラッシュゾーン)のような箇所や、操業を止められない水路や 貯水槽、などでは、水中施工をやらざるを得ません。
水中施工には、“通常と異なる”材料と工法が要ります。
例1、海中の鋼構造物に現場ライニングする場合
○被覆防蝕の最初の工程はケレンです。・・道具は何が使えるのか・・
電動工具 :これは論外、イチコロで感電します。
(動力工具を使うなら、エアツールです。但し、何でも使えるかどうかは不明。)
ハンドツール :水中で、ハンマーを振り回すのも大変でしょうから、重い鋼製のケレン棒等
を作って “つつく” などの工夫をすれば、(不完全、不十分ですが)何とかなります。
サンドブラスト :空気中と同じようにできるそうです。(これに関しては我々は経験なし)
但しケレン後の表面に、塩分と 水が (しばしば錆も)存在しますので、
それでも構わないような材料や仕様で施工する必要がありますが、
そういうものは、そんなに沢山は有りません。
それでも構わないような材料や仕様で施工する必要がありますが、
そういうものは、そんなに沢山は有りません。
○防蝕材料
(上記の状況で)どんな種類の防蝕材料が使えるのか・・・
ビニルエステル・不飽和ポリエステル・MMA・フラン・フェノール
・・・これらは、“水中で、硬化不良を起こします” ので、(特別の 水中硬化法を 作らない限り)使えません。
・・・これらは、“水中で、硬化不良を起こします” ので、(特別の 水中硬化法を 作らない限り)使えません。
ウレタン
・・・水が混ざると大抵 発泡 しますが、発泡 が防止できれば使えそうです。
しかし、水中接着は相当困難です。(理由の説明は省きます。)
(少なくとも私達は、水中接着ができるウレタンの市販品は、見たことがありません。)
・・・水が混ざると大抵 発泡 しますが、発泡 が防止できれば使えそうです。
しかし、水中接着は相当困難です。(理由の説明は省きます。)
(少なくとも私達は、水中接着ができるウレタンの市販品は、見たことがありません。)
セメント類
・・・セメントも一応、“水で硬化不良を起こさない防蝕材” の一つです。
・・・セメントも一応、“水で硬化不良を起こさない防蝕材” の一つです。
こういった “硬化反応を利用しない工法と材料” を使う方法もあります。
そういった材料なら“硬化不良” の問題そのものを避けられます。
例えば、プラスチックシートや、耐蝕金属シートや、FRP成型品などを “貼り付ける” 方法。
(どうやって貼り付けるか、という問題は、残りますが・・・)
(どうやって貼り付けるか、という問題は、残りますが・・・)
あるいは、熱可塑性樹脂を(流動化させた状態で)、塗りつける方法です。
原油の高温瑠分である “ペトロラタム” や “変性アスファルト” は、常温で 流動性を持っているので、そのまま塗布可能です。
原油の高温瑠分である “ペトロラタム” や “変性アスファルト” は、常温で 流動性を持っているので、そのまま塗布可能です。
○防蝕材の性状
液状のものは、水中では、ちょっと施工が大変です。(やってみれば、すぐ分かります。やるなら型枠が要ります。)
パテ状にして、押し付けるように施工するのが一番楽です。・・というより、塗布作業をするなら、これより他は無さそうです。
パテ状にして、押し付けるように施工するのが一番楽です。・・というより、塗布作業をするなら、これより他は無さそうです。
以上により、材料としては、
●パテ状のエポキシ樹脂(の水中硬化型)
●パテ状の熱可塑性樹脂(アスファルトやペトロラタムなど)
●プラスチックシートや成型品類
●セメント類
●パテ状の熱可塑性樹脂(アスファルトやペトロラタムなど)
●プラスチックシートや成型品類
●セメント類
などが使える、ということになります。
この段階では、“使用可能な材料と作業性” がクリアーされただけです。
接着安定性と環境遮断性と耐蝕性のチェックがまだ済んでいません。
接着安定性と環境遮断性と耐蝕性のチェックがまだ済んでいません。
【1】耐蝕性(*)
紫外線、波、浮遊物のぶつかり等に耐えるようにしておく必要があります。
(*)私たちは、化学物質に対する耐性だけでなく、機械的破壊力や放射線など、「その環境におけるあらゆる材質劣化要因に対する抵抗力」を包括して “耐蝕性” と表現しています。一般的に使われる “耐蝕性” と多少意味合いが違いますので、ご注意ください。)
★下地と、安定した接着ができるなら、ライニング膜は、薄くても(強度的には)大丈夫ですが、下地と一体化していなければ(カミさん効果が働かないので)、厚く頑丈な膜が必要です。
そして、この場合は、下地の状況が悪いので、接着に対する信頼性は高くありません。
そして、この場合は、下地の状況が悪いので、接着に対する信頼性は高くありません。
★水中以外は、紫外線による劣化(チョーキング)が避けられそうにないので、劣化代 として厚くしておくことが、必要です。
つまり、この環境で、長く耐久するには、防蝕膜自体が厚く頑丈でないといけません。
【2】環境遮断性
膜を厚く頑丈にすれば、それだけで、環境遮断性は自動的にクリアーされます。
【3】接着安定性
上記のような、不十分なケレンで、厚く頑丈なライニングの接着層を作れるのか?
実際に水中でどの程度の接着が出来るのか、テストをやってみました。
(実験)
鋼板をサンダーで磨き、海水に浸けて一時間放置した後、(そのまま海水中で)エポキシ系水中接着剤(弊社:ファンデーション#349W)を塗布し、試験用テストピースを接着。
鋼板をサンダーで磨き、海水に浸けて一時間放置した後、(そのまま海水中で)エポキシ系水中接着剤(弊社:ファンデーション#349W)を塗布し、試験用テストピースを接着。
そのまま海水中で一週間養生した後、引っ張り試験を行いました。
(結果)
150kgf/cm2(テンシル)
適当な接着剤を選べば、空気中とあまり変わらない接着強度が出せるようです。
錆の上からの接着
・・・錆が材料破壊します。(錆の強度が“接着強度”として計測されます。)
・・・錆が材料破壊します。(錆の強度が“接着強度”として計測されます。)
実験した限りでは、接着強度自体は、問題ないようです。
問題はこの数値の “経時変化” ですが、それに関しては、説得力がある一般論を導けるような試験方法のアイデアがなく、まだ試験をしていません。
しかし、ともかく、エポキシ樹脂を使えば、水中ライニングは “可能だ” というのが結論です。
(劣化した湿潤コンクリートへのライニング も参考にしてください。)
もう一つ、逆に、“強力な接着力”を避けるというアプローチの仕方が有ります。
ペトロラタムや液状アスファルトを使う方法です。