高温の水溶液が入るタンクの防蝕
温度が高くなると、塗膜には水蒸気拡散の圧力がかかり、それによってライニング膜を透過した水分が膜の裏の接着界面を攻撃し(水と接着・参照)、結果としてブリスターや剥がれを生じます。
その拡散量を左右する環境要因は二つです。
①塗膜の裏表にできる温度勾配
②温度そのもの
②温度そのもの
前者から、実例で説明します。
加熱蒸発方式による海水淡水化装置のゴムライニングを点検したことがあります。
内部は、15mmを超える厚さのゴムライニングを施してあり、その所々で、ゴムライニングが膨らんでいました。
それは、どういう所だったのか。タンクの外側を点検しました。
タンクの外側は、もちろん 厚く保温材でくるんでありました。
図が、その部分の構造です。
内部は、15mmを超える厚さのゴムライニングを施してあり、その所々で、ゴムライニングが膨らんでいました。
それは、どういう所だったのか。タンクの外側を点検しました。
タンクの外側は、もちろん 厚く保温材でくるんでありました。
図が、その部分の構造です。
タンク内面のゴムライニング→
ブリスター→
(膨れ)
(膨れ)
タンク本体↑
←タンク外面の保温材
←支持アングル
支持アングルを伝わって熱が逃げるため、タンクのその部分の温度が下がり、ゴムライニングの表裏の温度差が大きくなってブリスターが生じた。
(・・・と、結論し、支持アングルも保温するという解決策を講じました。)
(・・・と、結論し、支持アングルも保温するという解決策を講じました。)
これが、温度勾配の影響です。
内部温度が、それほど高くなくても、外から強制冷却すると、同じ現象が生じます。
[テストピースの問題]
ライニングにこのようなトラブルが生じた場合、ユーザーや設計会社の方たちは、大抵、材料の良否の問題と誤解し、“これがダメなら別のものを試してみよう。”という考え方をされます。
そして、テストピースを作り、タンク内にぶら下げて、その結果がOKなら、“この材料なら、大丈夫だ”と、結論づけます。・・しかし、そういうテスト法は間違いです。
中にぶら下げたのでは 塗膜に温度勾配がかからないので、本当に使えるかどうかの判断はできません。
そして、テストピースを作り、タンク内にぶら下げて、その結果がOKなら、“この材料なら、大丈夫だ”と、結論づけます。・・しかし、そういうテスト法は間違いです。
中にぶら下げたのでは 塗膜に温度勾配がかからないので、本当に使えるかどうかの判断はできません。
[どうやって水蒸気拡散に対抗するか]
経験的には以下の事が知られています。
①樹脂の熱変形温度(HDT)を上げる。
②膜厚を大きくする。
③耐拡散性を良くする混ぜ物(用語・混ぜもの仕様・参照)をライニング材に加える。
④タンク外面を保温する。
⑤その他
①樹脂の熱変形温度(HDT)を上げる。
②膜厚を大きくする。
③耐拡散性を良くする混ぜ物(用語・混ぜもの仕様・参照)をライニング材に加える。
④タンク外面を保温する。
⑤その他
上記対抗策がなぜ有効なのか。順に説明します。
①樹脂の熱変形温度を上げる
経験則ですが、例えば、60℃で使う場合、樹脂の熱変形温度(HDT 用語参照)も60℃以上ないと、もたないという傾向があります。
樹脂が柔らかくなるという現象と、環境遮断性の低下は 何らかの理由によってリンクしているのかもしれません。(何の説明にもなっていませんが)
ちなみに、熱変形温度が高いということは、高温でも硬いということであり、それはまた、架橋密度が高いということです。つまり、三次元網目構造が、密であるということであり、それ故に水分子等が通り抜けにくい・・・と推測することができます。
また、ビスフェノール骨格やノボラック骨格、ベンゼン骨格のような剛直な分子構造を取り入れる方が良いという経験則もあります。架橋した網目をグラグラさせず、ガッチリ固定した方が通り抜けにくい・・・ということかも知れません。
先述のように、これらは何れも推測です。我々の能力では、これ以上の追及はできません。学術的に研究なさる方に、経験情報としてお知らせします。
樹脂が柔らかくなるという現象と、環境遮断性の低下は 何らかの理由によってリンクしているのかもしれません。(何の説明にもなっていませんが)
ちなみに、熱変形温度が高いということは、高温でも硬いということであり、それはまた、架橋密度が高いということです。つまり、三次元網目構造が、密であるということであり、それ故に水分子等が通り抜けにくい・・・と推測することができます。
また、ビスフェノール骨格やノボラック骨格、ベンゼン骨格のような剛直な分子構造を取り入れる方が良いという経験則もあります。架橋した網目をグラグラさせず、ガッチリ固定した方が通り抜けにくい・・・ということかも知れません。
先述のように、これらは何れも推測です。我々の能力では、これ以上の追及はできません。学術的に研究なさる方に、経験情報としてお知らせします。
以上は、高温における樹脂の物性変化の問題ですが、高温は環境の性質も変化させます。
どんな化学物質も、ガス状になると急にライニング膜に対する透過性が強くなる・・・
という一般則があります。
分子が、バラバラで自由に動き回っているから、という理由だけでは、樹脂中の拡散を説明できないという気がします。
空気に分散した塩素ガスでも水に溶けた塩素イオンでも、バラバラであることは同じだからです。
それを考えると、拡散成分の“クラスター”の大きさの違いで説明するのが一番合理性があるような気がします。
つまり、水やその他のいろいろな物質は、大小様々な複合クラスターを形成しており、樹脂中でも、ある程度その構造を保ったまま拡散していく。という仮説です。
どんな化学物質も、ガス状になると急にライニング膜に対する透過性が強くなる・・・
という一般則があります。
分子が、バラバラで自由に動き回っているから、という理由だけでは、樹脂中の拡散を説明できないという気がします。
空気に分散した塩素ガスでも水に溶けた塩素イオンでも、バラバラであることは同じだからです。
それを考えると、拡散成分の“クラスター”の大きさの違いで説明するのが一番合理性があるような気がします。
つまり、水やその他のいろいろな物質は、大小様々な複合クラスターを形成しており、樹脂中でも、ある程度その構造を保ったまま拡散していく。という仮説です。
『水のクラスターの大きさは温度の上昇とともに小さくなり、気化すると劇的に小さくなる。』(茅幸二、西信之著<クラスター>・・・産業図書)
これは、経験的な、(ライニング膜への)水の浸透性の変化と符合しているような気がします。(但し、水中にクラスターなるものが実在するや否やに関しては、専門家にも多くの異論があるようです。だからあくまで仮説です。)
②膜厚を大きくする。
お勉強(1)を参照してください。
③耐拡散性を良くする混ぜものを加える。
④保温をする。
これは、この項の一番最初に説明しました。
保温によって、防蝕膜の裏表の温度勾配を小さく出来ます。
保温によって、防蝕膜の裏表の温度勾配を小さく出来ます。
⑤その他。
事情があって、説明は省略。