架橋型接着剤と非架橋型接着剤の使い分け
架橋というのは、重合反応のことです。
図のように、接着剤を構成する多数の分子が化学 反応して、青線でつながっていくと全体が絡まりあった 巨大な分子になっていき、それにともなって外見は、
液状⇒高粘度⇒固体と変化します。
分子が繋がっていく様子が橋をかけるように見える(?)ので、これを架橋反応といい
液状⇒高粘度⇒固体と変化します。
分子が繋がっていく様子が橋をかけるように見える(?)ので、これを架橋反応といい
青線になる成分を“架橋剤”、反応の基点や終点になる●部を“架橋点”(あるいは、官能基)と称します。
官能基の数が1分子中に一つしかない単官能分子の場合、図1のように二つがくっ付いて終りです。(固まりません。)
官能基が二つある二官能分子の場合は図2のように線状につながっていきます。(たいていの場合、やや軟質、あるいはゴム状になります。)
官能基が二つある二官能分子の場合は図2のように線状につながっていきます。(たいていの場合、やや軟質、あるいはゴム状になります。)
(図1)単官能分子の場合(固まらない)
(図2)二官能分子の場合(ゴム状)
三つ以上になると、複雑に立体的に密に絡み合ってつながるので、その状態を“三次元網目構造”と言い習わしています。(硬くなります。)
(図3)多官能分子の場合
このように、分子の官能基が多い程、絡まりあいが複雑で密になり、その結果、より硬くなり、より高い温度でも柔らかくならず、溶剤にも溶け難くなります。
たいていの架橋型接着剤は最終的に、この三次元網目構造になります。
エポキシ接着剤(エポキシ樹脂とポリアミンの反応によって重合)や瞬間接着剤(α-シアノアクリレートと水分によるイオン重合)が、その例です。
エポキシ接着剤(エポキシ樹脂とポリアミンの反応によって重合)や瞬間接着剤(α-シアノアクリレートと水分によるイオン重合)が、その例です。
接着剤というのは(液状で)被着体表面に濡れ拡がり、(ウェッティング/wettingといいます)その後“固化”することによって被着体を固定する材料です。
(例外はありません。それ故、ある意味でこれは“接着剤”の“定義”です。)
(例外はありません。それ故、ある意味でこれは“接着剤”の“定義”です。)
この、“固化”を化学反応で行うタイプが架橋型接着剤であり、別のやり方で固化するのが、非架橋型接着剤です。
つまり、非架橋型接着剤というのは、固化に化学反応(重合反応)を使わずに、物理的変化を使う物の事です。
デンプンを水に溶かして液状にし、その水を蒸発させて固化する“デンプン糊”、同じやり方でポリ酢酸ビニルを使った“木工ボンド”、その水の代わりに有機溶剤(酢酸エチル)を使って乾燥を早めた某社の有名な“セメダインC”、ゴムを有機溶剤に溶かしたパンク修理の”ゴム糊”等がその例で、これらは溶剤型接着剤といいます。(水は溶剤として分類しないという“世間常識”がありますのでややこしいのですが、水も広い意味では溶剤です。・・・というより、溶剤のチャンピオンです。 原理的には、そう捉えるのが合理的です。)
その他、熱で融かして液化させる“ホットメルト接着剤”や、粘着剤も非架橋型接着剤です。
ちなみに、粘着剤というのは液体と固体の中間で、両方の性質を中途半端に保っているものです。(その意味では、あらゆる接着剤は固化する直前は、粘着剤状態になります。)
さて、以上のように架橋型が三次元網目構造の巨大分子になって固化するのに対し、非架橋型は、固化に際して分子量が変化しません。そして、加熱して融けたり、溶剤に溶けるようにするためには、分子量をあまり大きくできませんので、非架橋型は、“固化した状態でも分子量はあまり大きくない”ということであり、それが両者の物性の根本的な違いになります。
つまり、熱で軟化しにくい、溶剤で溶けにくい、硬いといった三次元網目構造の性質が架橋型接着剤の性質であり、一方、加熱すると融ける(接着力を失う)、溶剤に溶ける、柔らかい(*注)・・・といった低分子量ポリマーの性質が、非架橋型接着剤の性質です。
況に合わせて、こういった特徴や差異が活きるような使い分けをします。
(*注)
写真:(フレキシブルな不飽和ポリエステルの例)
上の写真のように三次元硬化したにも関らず軟質な不飽和ポリエステル樹脂のように、硬い、柔らかいは分子量の大きさ以外に、網目の構造の違いや可塑性成分の有無などで変わりまが、同一の樹脂であれば、分子量が大きい程 硬くなります。
この説明は、そういう一般論を言ったものです。
そして、現実には架橋と非架橋の中間型や混在型の接着剤も作ることができますので、両者に境界はありませんが、典型的なものは、ハッキリと上記のような違いがあります。)
この説明は、そういう一般論を言ったものです。
そして、現実には架橋と非架橋の中間型や混在型の接着剤も作ることができますので、両者に境界はありませんが、典型的なものは、ハッキリと上記のような違いがあります。)
[両者の使い分け]
以上のような理由により、
○溶剤や熱に耐えるような接着を望むなら、架橋型接着剤を使わなければいけません。
そして、一般的にいえば、
○熱や溶剤に関係しなくても、過酷な環境下で高い耐久性を求めるなら、架橋型のほうが適します。
(ただし、これは大雑把な経験則であり、例外もありますので100%の真理だとは思わないでください。)
(ただし、これは大雑把な経験則であり、例外もありますので100%の真理だとは思わないでください。)
[閑話休題-剥がし方-]
説明した理由により、粘着剤、ゴム糊等、非架橋型接着を剥がす場合は、加熱したり、溶剤に浸したりすれば、たいてい簡単に剥がせます。
(親水性の接着剤を使った)切手やラベルを水に浸けて剥がすテクニックはこの範疇に入ります。
非架橋型の粘着剤や接着剤をドライヤーやアイロンで加熱して剥がすテクニックも、幅広く適用できます。試してみてください。
(親水性の接着剤を使った)切手やラベルを水に浸けて剥がすテクニックはこの範疇に入ります。
非架橋型の粘着剤や接着剤をドライヤーやアイロンで加熱して剥がすテクニックも、幅広く適用できます。試してみてください。
一方、架橋型接着剤を剥がすには・・・・
力任せにぶち壊すという方法が有効です。(それは冗談ですが。)
力任せにぶち壊すという方法が有効です。(それは冗談ですが。)
ゴム系接着剤には架橋型と非架橋型の二種類が在り、非架橋型は当然加熱すると簡単に剥がれますが、架橋型でも(架橋がゆるいので)高温になると軟化して、剥れ易くなります。
溶剤に浸けておく、というやり方は耐溶剤性の低い接着剤を剥がすのには有効です。(架橋型でも、耐溶剤性は架橋密度の差異等によって変わります。ゴム系の耐溶剤性は一般的に言って低い方に入ります。)
そして、やや専門的になりますが、どんな接着剤も(溶剤も)“SP”(Solbility Parametor・・・溶解度係数)という値を持っており、その値が近い溶剤には溶けやすい・・・という傾向があります。
つまり、相性です。
だから、相性の良い溶剤を作ってやれば、割と容易に剥がせます。
・・・が、三次元架橋が徹底的に進んでいれば、それすら受け付けません。
つまり、相性です。
だから、相性の良い溶剤を作ってやれば、割と容易に剥がせます。
・・・が、三次元架橋が徹底的に進んでいれば、それすら受け付けません。