本文へ移動

樹脂ライニング材に溶剤を加えるとどうなるか?

塗料メーカーから発売されている大半の無溶剤エポキシライニング材には、(たとえ溶剤と表示されていても、)溶剤が入っています。(言葉の目くらまし参照)
 
                  溶剤を入れるメリットは、次のようなことです。
・粘度が大幅に低下するので、作業が非常に楽になり、能率が上がる。
・消泡剤やレベリング剤が効きやすくなるため、仕上がりがきれいになる。

つまり、目先の利益があります。
 
                  入れるデメリットは、次のようなことです。
・残留応力が増大する。
ライニング膜は、塗装と比べはるかに厚いので、溶剤は塗装のようには簡単に抜けません。勢い、硬化後ゆっくり抜けていくことになります。もしそれが樹脂の5%であったら、5%分の収縮が生じないと安定しませんが、硬化が終わっていれば、収縮できず、その分の残留応力を発生させます。これが接着界面に働けば、剥がれを助長します。
剥がれと界面応力 参照)
・膜の物性が変わる。
溶剤を加えても、全部蒸発すれば残ったものは同じだ。”と考えてはいけません
                      違うのです。             入れたら変わります。
例えばエポキシ樹脂に硬化剤を加えて混ぜ、二つに分け、一方にその辺の溶剤をほんの少し加え、同じ条件で固めて、物性テストをしてみてください。
溶剤を入れた方は、
              *吸水率が大きくなります。
              *通常、耐溶剤性も、低下します。
   つまり、何かが変わり、大抵悪い方に変ります。
   ・・で・・残留応力やこういう物性変化の悪影響は、ずっと後になって出てきます。
 
例えば、吸水率が大きいということは、極性成分に対する遮断性が小さいということを意味し、大抵の腐蝕性物質が透過しやすいということを意味します。
さらに、乾湿に応じて伸び縮みするということであり、そのことは接着面にそのストレスが掛かるという事です。(ストレスは、剥れを助長します。
(接着界面にかかる応力は、伸び量をA、塗膜の弾性率をB、塗膜の厚さをCとすると、A×B×Cで表現されます。ライニングは塗装より桁違いに膜厚が大きいので、接着界面にかかる応力も桁違いになります。 )
 
溶剤の臭いや安全性に関する問題とは別に、溶剤を加えると、こういう(物性の)違いが生まれる、という事には留意すべきです。
どちらを選ぶかは自由ですが、耐久性を重視するなら入れない方がいいと思います。
 
(率直に言えば・・・“防蝕ライニング材に、溶剤を入れる”なんてのは、仕事を知らないシロートのやる事だ、と思います。)
 

“デタラメ施工”の手段としての「溶剤添加」

上記は、溶剤が混ざり、かつ、それが完全に抜けて、外見上何も問題が無いように見える場合でも、様々な、「“物性の変化”が生じていますよ。」という話ですが・・
 
ところで、現実世界では、そういうビミョーな話では無く、もっと次元の低いインチキ施工の手段として“溶剤添加”“頻繁に”行われています。

例えば冬季は、夏や春と比べ、無溶剤樹脂の粘度は格段に上がり、そのことによって、作業性が極端に悪くなりますが、その悪化した作業性を良くするだけの目的で、溶剤を加えて粘度を下げるという行為が行われます。
もっとヒドイのは、冬でなくても、“
もっと楽に能率良く作業したい”という考えで、溶剤を加える事も行われています。

                                                                              その結果、どうなるか。
(それ以外の様々なインチキテクニックとの相乗効果によって、無数のトラブルが発生しているようですが、その数の多さと原因の幼稚さを見れば・・もしかしたら、悪意でそうしているのではなく、そういう材料メーカーや施工業者や元請や発注者は、基礎的な実務知識を持っていないのかも知れません。)
 
そういうトラブル例や、問題のある施工法については、独立した項目として、一つにまとめたほうが分り易いと思いますので、そのうちそうする予定です。⇒⇒?例えば?
 
株式会社ソテック 〒272-0004 千葉県市川市原木2165 TEL.047-328-6390 FAX.047-328-6392 1.防蝕ライニング設計、施工 2.防蝕ライニング材・接着剤・製造、販売
TOPへ戻る